食感

しけた煎餅は乾かせば戻る?柿の種の研究では、湿らせて乾かし直したものが一番好まれなかった

約7分で読めます / 主役の研究: Saitaら 2021(東北大学・亀田製菓)

研究の確かさ ★☆☆ 低い論文4本を照合
器に入った柿の種とピーナッツ
Photo: Nesnad / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された論文と試験場の報告書をAIが開いて読み、数字を照合して整理しました(商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

袋を開けたまま置いた煎餅が、しけてしまった。トースターやオーブンで乾かせば元に戻る、という話はよく聞きます。研究ではどこまでわかっているのでしょうか。米菓で「乾かし直し」を食べ比べた、数少ない研究を読みます。

結論

  1. 東北大学と亀田製菓の研究では、柿の種を湿らせてから乾かし直したものが、ほぼ「ベタベタ」とだけ表され、5種類の中で好みの点数が一番低かった。
  2. 5種類の食感の違いを最もよく表したのは湿り気だった。噛む音の大きさと好みの関係ははっきりしなかった(r = 0.63, p = 0.08)。
  3. 乾かし直しの温度や時間は論文に書かれておらず、家庭で十分に乾かせば戻るかは、まだ調べられていない。しけさせない保存が先。

01 どんな研究か柿の種の食べ比べで何を調べた?

東北大学と亀田製菓の Saitaらは、柿の種5種類を大学生らに食べてもらい、噛んでいる間の食感を10個の擬音語で、好みを1〜9の目盛りで、時間を追って記録しました。

Saita A ほか / 東北大学・亀田製菓 Rice Research Institute(2021)[1]

試料は、食感の違う市販の柿の種3種類と、そのうち1種類を「湿らせてから乾かし直したもの」「砕いたもの」の計5種類。乾かし直したものは、2つの実験のどちらでも、ほかの4種類より好みの点数が有意に低かった。

対象: 実験1は大学生・大学院生・研究者21人(分析は20人)、実験2は別の大学生20人 / 限界: 乾かし直しの条件(温度・時間・水分)は本文に書かれていない。研究の一部は亀田製菓との共同研究費で行われた。

擬音語は、バリバリ・ボリボリ・ガリガリ・ザクザク・パリパリ・ポリポリ・カリカリ・サクサク・サラサラ・ベタベタの10個です。食べている間、いま一番強く感じる言葉を選び続けてもらう方法(TDS法)で記録しました。乾かし直した柿の種では、実験2でほぼ「ベタベタ」だけが選ばれました。著者らは、食べ始めは表面のべたつき、後半は湿り気の意味で使われたと考えています。

02 わかった数字しけた食感はどれくらい嫌われる?

乾かし直した柿の種は、2つの実験のどちらでも、5種類の中で好みの点数が一番低く、ほかの4種類との差は統計的に有意でした。

5種類中 最下位湿らせて乾かし直した柿の種の好み(2つの実験とも、Saitaら 2021)
r = 0.63噛む音の大きさと好みの相関。p = 0.08 で有意ではなかった(同上)
水分8%超玄米などのパフが、割れずにつぶれる壊れ方に変わった水分(Takahashi・Fujii 2025)
約40℃水分8%のパフのガラス転移温度。これより低い温度でパリッとした状態を保つと推定された(同上)

なぜしけるとパリパリ感が消えるのか。穀物のパフ(玄米・大麦・はと麦・アマランサス)を調べた研究では、湿度が上がるほど割れるのに必要な力が下がり、水分が8%を超えると、割れずにつぶれる壊れ方に変わりました[3]。水分8%のパフのガラス転移温度は約40℃で、これより低い温度ではガラスのように硬く割れる状態、高い温度ではゴムのような状態になる、と推定されています。

ややこしいのは、しけかけると「硬くなる」ことがある点です。シリアルやスナックの研究では、中くらいの水分でパリパリ感が失われる一方、かたさ(変形しにくさ)はむしろ上がり、食べた人も「硬い」と感じました[2]。著者はこれを「水分による強化(moisture toughening)」と呼んでいます。硬いからまだしけていない、とは言えないということです。

パンの皮をモデルにした研究では、一度多くの水分を含んでから乾いたものは、水分が均一でなく、パリパリな所とそうでない所がまだらになると考えられました[4]。乾かし直した煎餅でも、表面と中で戻り方が違う可能性があります(煎餅では確かめられていません)。

03 煎餅作りへの使い方手作り煎餅をしけさせないには?

焼いて冷めたらすぐ湿気から守るのが、研究から見て一番確かです。乾かし直しは、戻るかどうかを焼きたてと並べて確かめる実験として試すのがよいでしょう。

1

冷めたらすぐ密閉する

焼いた煎餅は、冷めたら乾燥剤と一緒に密閉容器へ入れます。開けたまま、密閉だけ、密閉と乾燥剤の3通りで、30分後・2時間後・1日後の食感を比べると、自分の台所での差がわかります。

目安 3条件×3時点、各2枚

2

乾かし直しを焼きたてと並べて食べ比べる

1日開けておいた煎餅を低温のオーブンで乾かし直し、焼きたて(または密閉保存)と並べます。どれがどれか分からないよう番号をつけ、2人以上で食べ比べます。焦がさないよう、様子を見ながら短い時間から試します。

目安 乾かし直し・焼きたて・そのままの3種類

3

硬さとパリパリ感を分けて記録する

Saitaらの10個の擬音語から、感じた言葉を選んで書き留めます。「硬い」と「パリパリ」は別のものとして記録します(しけかけると硬さが増すことがあるため)。

目安 1枚につき言葉を1〜3個

焼く前の水分や乾かし方でも、焼き上がりの水分は変わります。天日干しの煎餅はなぜふくれる?では、焼いた後の水分が8.1%と2.6%と大きく違った試作を紹介しています。膨らみの決まり方は煎餅の膨らみは焼く前に決まる?で読めます。

04 まだわからないことしけた煎餅を元に戻す方法はある?

まだわかっていません。煎餅の乾かし直しで、どの温度と時間ならどこまで戻るかを直接調べた研究は、今回の調べでは見つかりませんでした。

  • Saitaらの乾かし直しは、湿らせ方も乾かし方も本文に書かれていません。しっかり乾かしきれば戻るのか、戻らないのかは、この研究からは言えません。
  • 煎餅(日本の焼き米菓)のガラス転移温度や、パリパリ感が消える水分の値は見つかりませんでした。8%は玄米などのパフの値です。
  • 柿の種と、厚い醤油煎餅やもち米の揚げ煎餅で、同じことが言えるかはわかりません。
  • 噛む音と好みの関係は、この研究では有意になりませんでした。音を大きくすると美味しく感じるかは、別の問いとして残っています。

組み合わせツールで試す研究一覧を見る

05よくある質問

しけた煎餅はトースターで温めれば戻る?

研究ではまだわかっていません。柿の種の研究で、湿らせてから乾かし直したものは「ベタベタ」とされ、5種類の中で一番好まれませんでした。ただし乾かし直しの条件は論文に書かれておらず、十分に乾かせば戻るかは確かめられていません。

しけかけた煎餅が、かえって硬く感じるのはなぜ?

シリアルやスナックの研究では、中くらいの水分でパリパリ感が失われる一方、かたさはむしろ上がり、食べた人も「硬い」と感じました。水が少し入ると、割れが広がりにくくなるためと考えられています。

煎餅がしけるのは水分がどれくらいから?

煎餅での値は見つかりませんでした。玄米などのパフの研究では、水分が8%を超えると割れずにつぶれる壊れ方に変わり、水分8%のときのガラス転移温度は約40℃でした。煎餅に同じ値が当てはまるとは限りません。

出典

  1. Saita A, Yamamoto K, Raevskiy A, Takei R, Washio H, Shioiri S, Sakai N. (2021). Crispness, the Key for the Palatability of "Kakinotane": A Sensory Study with Onomatopoeic Words. Foods, 10(8), 1724. https://doi.org/10.3390/foods10081724
  2. Peleg M. (2015). Crunchiness Loss and Moisture Toughening in Puffed Cereals and Snacks. Journal of Food Science, 80(9). https://doi.org/10.1111/1750-3841.12971
  3. Takahashi A, Fujii K. (2025). Mechanical and Thermal Properties and Moisture Sorption of Puffed Cereals Made from Brown Rice, Barley, Adlay, and Amaranth. Foods, 14(2), 189. https://doi.org/10.3390/foods14020189
  4. van Nieuwenhuijzen NH, Primo-Martín C, Meinders MBJ, Tromp RH, Hamer RJ, van Vliet T. (2008). Water content or water activity: what rules crispy behavior in bread crust? Journal of Agricultural and Food Chemistry, 56(15), 6432–6438. https://doi.org/10.1021/jf800522c